Art Directon, Graphic Design, Book Design
福岡県立美術館が開催する「生誕130年 児島善三郎 展」のツールデザインに携わる。本展覧会では、ポスター、チラシ、チケット、図録のほか、展覧会の作品紹介パネル、館内のタペストリー、外看板など、トータルデザインに携わっている。
児島善三郎は、福岡・博多の紙問屋の生まれで、家業を継ぐことを周囲に望まれながらも、反対を押し切り絵の道を選ぶ。独学で学んだ絵画は、大胆なタッチと力強さが魅力となっている。また、児島善三郎は、病の時期が長い人生でもあった。だが、その苦しみをエネルギーに変え、回復後は意欲的に活動を行った。児島善三郎は闘病生活について「その間に「人間」を修養した。生命の尊さを知った。今も私が、来る日、来る日を惜しんで仕事をしているのはその時代の生命への愛着の実感から来ている」と語っている。
今回の展覧会のデザインでは、画面いっぱいに咲き誇るミモザを描いた作品〈ミモザその他〉(1957)をメインビジュアルとして起用。児島善三郎の絵画への情熱、大胆なタッチによる画風、そして生粋の博多気質の人柄が感じられるようなデザインを意識して制作を行なった。
特に図録では、色彩に富んだ児島善三郎らしさが感じられるような色使い、表紙、裏表紙は、あえてタイトルを入れず、まるでひとつの絵画のような作りとした。表紙とカバーが一体となったフランス製本にし、内側にもダイナミックに児島善三郎の作品をあしらった。そして、最後には、児島善三郎の言葉「狂う様な仕事ができる、それが私にとって何よりの幸福です」という言葉で締めくくった。
開催は丁度、コロナ禍が落ち着きだした頃で、「暗い世の中に光を灯したい」という、クライアントである福岡県立美術館の学芸員の方の想いから、エネルギッシュな児島善三郎の展覧会が開催された。「生誕130年 児島善三郎 展」には多くの方が訪れ、好評のポスターは急遽販売されることとなった。
また「生誕130年 児島善三郎 展」の図録は、東京アートディレクターズクラブ(ADC)主催の「日本のアートディレクション 2024」ブック&エディトリアル 部門で入選。2025年に発行される「ADC年間2024」に掲載される。
「生誕130年 児島善三郎 展」展覧会のトータルデザイン